最近、新聞で気になる記事をみかけましたので紹介します。『ガス中毒「特効薬」期待』(副題:同志社大学開発 COなど解毒化合物)という記事です。
火災ガス中毒「治療薬」開発 同大など(読売テレビニュース)
記事によると、一酸化炭素(CO)やシアン化水素によるガス中毒を解毒する化合物を、同志社大学の北岸宏亮教授(有機化学)らのチームが開発したとのこと。火災で死因の多くを占めるガス中毒に対する「特効薬」として、救急現場などでの実用化を目指すとしています。
北岸教授が所属する同志社大学のホームページにもプレスリリースが載っています。この研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載予定で、オンラインでは日本時間2023年2月21日に公開されるようです。論文へのリンクも紹介されていますので、興味のある方は覗いてみて下さい。オープンアクセス論文なので無料で閲覧可能、ダウンロードもできます。
記者発表があったということはすでに特許出願された筈と思い、特許庁の公報検索システムJ-PlatPatで公報を検索してみました。するとその名も「シアン解毒剤」という登録公報がありました。意外なことに権利はすでに消滅し、パブリックドメインとなっています。
・「特許第5619500号」(2010年7月12日出願、2014年9月26日登録、2019年9月26日年金不納による抹消)
また、Googleで検索すると、2010年頃から北岸教授ら同志社大学のグループや川口章教授ら東海大学のグループが火災時に発生する有毒ガスに対する解毒剤の研究を進めてきた経緯があるようです。つまり、かなり前から研究が進められてきている化合物の最新版が発表され、今回の記事となったようです。
解毒剤というと地下鉄サリン事件で知られるようになったアトロピンを連想してしまいますが、一酸化炭素中毒にも解毒剤があり得るのか!と少し意外な感じがしました。
火事などで発生する一酸化炭素は無色無臭で、いつの間にか死んでしまうという恐ろしいイメージがあります。少しでも早く救急現場での解毒剤使用が実現し、一人でも多くの人命が助かるように願わずにはいられません。(blink)