ドローンに関する特許

  • 2023年10月04日
#特許

 現在、ドローンは、空撮分野、測量分野、農林水産分野(農薬散布など)、点検分野(高所建造物の劣化点検など)、運搬・物流分野、防犯監視分野などで広く活躍しています。

ドローン

 国土交通省では、自然災害時の被災地における広範囲な情報の把握や初動対応の迅速化に向けて、汎用性の高いドローンの利活用を検討しています。今年4月の「ドローンの特許出願状況の調査分析」によると、2016~2020年のPCT出願(国際出願)の件数は、1位中国、2位米国、3位日本となっています。技術分野別には、機体構造、飛行制御、飛行支援、通信、ドローンポートシステム、用途などに関する出願があります。

 日本国内の出願をみても、2016~2021年に平均500件/年程度のドローン関係の発明が特許出願されています。その中には、火災現場においてドローンから消火用ボールを発射する「ボール発射装置」(第6918384号公報、特許権者 株式会社For Nature)の発明もあります。
 地球温暖化の影響により世界的に増加している山火事や、地震等の被災地で発生する火災に対しても、ドローンを利用した消火システムが有効に利活用されることを望みます。(コナン)

 <参考文献>
国土交通省 「行政ニーズに対応した汎用性の高いドローンの利活用等に係る技術検討会」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/gijyutu/sosei_safety_tk2_000041.html

国土交通省 「ドローンの特許出願状況の調査分析(令和5年4月)」(PDF)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/gijyutu/content/001603643.pdf

特許多腕人間方式 -海野 十三-

  • 2023年09月13日
#弁理士】 【#特許】 【#著作権

 弁理士が主人公の小説を紹介します。タイトルは「特許多腕人間方式」、昭和初期の作家「海野 十三(うんの じゅうざ)」による小説です。

 海野 十三(本名:佐野 昌一)は、ミステリー小説やSF小説を数多く発表し、「日本SF小説の父」と呼ばれています。海野氏は、作家デビュー後の昭和11年(1936年)、39歳のときに弁理士の資格を取得し、その2年後に「佐野電気特許事務所」を開設しています。

 「特許多腕人間方式」は、海野氏が44歳のとき、昭和16年(1941年)に発表された作品です。特許事務所を経営する弁理士のもとに1人の発明家が訪れ、「3本目の腕」に関する特許出願の依頼をするところから話が始まります。弁理士が、出願手数料および出願印紙料として発明家から受け取った百円紙幣(当時は大金)と対話(一人二役)しながら出願用の明細書を書き進めるという、ユーモラスかつシュールな場面が出てきます。特許請求の範囲の記載の中で「少なくとも」という表現を使い、特許範囲(権利範囲)を拡大したとして弁理士の腕前を披露する場面や、出願後に拒絶理由通知書が届き、審査官と面会し、拒絶理由の解消に奮闘する場面もあります。現在の弁理士実務にも通じるものを感じます。

特許多腕人間方式

 全体的にユーモアが散りばめられており、オチもなかなか。短編小説のため、あっという間に読み終えました。
 この作品は、海野氏の死後50年以上経過しており、著作権の保護期間が満了しているため、青空文庫などで自由に読むことができます(ヒロ)。

「特許多腕人間方式」青空文庫

AR・MRによるシミュレーション技術

  • 2023年07月19日
#商標】 【#特許

 ヘッドマウントディスプレイを装着して周りを見ると、現実の空間上に仮想空間の物体が重なって見えます。これがAR(拡張現実)です。また、仮想空間の物体を自由に動かせるようにする技術がMR(複合現実)です。近年、ARやMRは、医療分野その他の各産業分野での作業支援や教習訓練に広く利用されています。VR(仮想現実)、AR、MRを合わせてXR(クロスリアリティ)とも呼ばれています。

 推進工法やシールド工法による地下トンネル工事を行うサン・シールド株式会社では、地下トンネル工事の作業計画や工事に用いられる掘進機の製造、保守などの工程において、AR、MRによるシミュレーション技術を積極的に活用しています。実際の活用例は、YouTubeのSunshieldチャンネル(下記リンク)にも紹介されています。

 知的財産の面からもサン・シールド株式会社は、「作業支援システム」(特許第6969807号公報)の特許権や「SUNーSHIELD MRシミュレータ」(商標登録第6379062号)などの商標権を取得しています。

SunShield_MRシミュレーター

 都市整備事業における地下開発の役割は今後ますます重要になってくると思われます。それを支える作業においてXRの最新技術がより有効に利用されることに期待します。(コナン)

サン・シールド株式会社ホームページ
https://www.sunshield.co.jp/

YouTube Sunshieldチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCvS6w4NRWGAZ7aOcw34CXmA

「知財」のお仕事

  • 2023年04月26日
#商標】 【#実用新案】 【#意匠】 【#特許】 【#知的財産

始まりました!ドラマ「それってパクリじゃないですか?」
原作の小説を読んでより一層ドラマが楽しみになっています。この原稿は第一話の放送後に書いていますが、ドラマ用に再構築されていて初回から原作と異なる部分がたくさんあり今後の展開がとても楽しみです。「特許は言葉を武器とした陣取り合戦」、「知財の仕事は誰かの作り出した汗と涙の結晶を守ること」という台詞が印象的でした。

ドラマ第一話ではまだ主人公の働く会社に知的財産部(知財部)がありません。第二話以降で新設される知財部の活躍がどのように描かれるのでしょうか?弁理士による監修ということでリアリティのある内容に仕上がっていると思うので、楽しみながら身になる知識が得られそうです。

原作には、~新米知的財産部員のお仕事~という副題が付いています。
知財部がなく開発部や総務部で兼任されている企業の方にとっても、「知財」のお仕事を理解する手助けになるのではと思います。弊所でも知財部の役割をより理解し、お客さまに必要とされるサービスを提供するために活用していきたいと思います。

それってパクリじゃないですか? それってパクリじゃないですか?

ところで、特許庁もこのドラマに注目してツイートしています。
撮影協力も行ったようで、特許庁の普段見られない場所が見られるそうです。こちらも注目ですね♪(カカオ)

原作|それってパクリじゃないですか?|日本テレビ
連続ドラマ化決定の話題作『それってパクリじゃないですか?』は「知財」のお仕事がよく分かる、極上のエンターテインメント小説 | 集英社オンライン
ちょっと一言 | CoffeeBreak | 日本知的財産協会
「明日スタートの日テレ系新水曜ドラマ「#それってパクリじゃないですか?」 皆さんの身近にある #知的財産 がテーマ! #知財 といえば #特許庁 !我々も応援します📣 実は・・・本作で撮影協力を行いました🎥 普段見られない場所もあるので、何話で特許庁が舞台になるかぜひご注目ください! #それパク」 / 特許庁Twitter

大切なペットの命を守る~日本動物高度医療センター

  • 2023年02月01日
#商標】 【#特許

 2ヶ月程前、私の家の犬(オス11才)の体調が悪そうだったので受診したところ、かかりつけの獣医から精密検査のために日本動物高度医療センターを紹介されました。

動物病院

 日本動物高度医療センターでは、専門診療分野の獣医師が専門の医療機器を用いて、疾患動物にとって最適な検査・診断・治療を提供します。
   https://www.jarmec.co.jp/

 日本動物高度医療センター(Japan Animal Referral Medical Center)の略称である「JARMEC/ジャーメック」、及び、日本動物高度医療センターのマークは、「動物の治療」を指定役務として商標登録(第5075207号、第5922959号)されています。また日本動物高度医療センターは、「イヌのがん細胞に対する増殖抑制剤」の発明について特許(第6840886号公報)を取得しています。

JARMEC商標

 精密検査の結果、幸い私の家の犬には腫瘍等の異常は認められず、ひとまず経過観察と診断されました。薬の投与で指標数値も改善され、現在は元気に暮らしています。(コナン)

診察

 (注)イラストはイメージであり、日本動物高度医療センターとは関係ありません。

エレキソルト

  • 2023年01月25日
#商標】 【#特許

 「エレキソルト」は、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させるスプーン型、お椀型のデバイスで、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明先生の研究室とキリンホールディングス株式会社による共同研究で開発されたものです。現在は、実証実験中、2023年の発売を目指しているそうです。

 エレキソルトは、独自の電流波形の電気味覚技術を搭載し、スプーンやお椀に微弱な電流が流れることで効果を発揮するものです。年末年始にテレビを見ていたところ、いくつかの番組で取り上げられていて、注目しています。

 特許がありそうだな、と思い調べてみたところ、出願人が学校法人明治大学、宮下芳明先生が発明者になっている電気味覚関連の出願が2件ありました。(特開2021-045399、特開2019-212799)
 また、「エレキソルト」の商標が、キリンホールディングス株式会社から出願されており、現在審査中のようです。(商願2022-088846)

 塩分摂取過多と言われる日本人。最初は医療、介護分野からの導入になりそうですが、手頃な価格で買えるようになったら、ぜひ試してみたいと思います。(マロン)

参考記事:明治大学 2022年度プレスリリース

遠赤グラファイトヒーター

  • 2023年01月11日
#特許

 私の住んでいる名古屋は、めったに雪も降らず、寒さに弱い私も年中過ごしやすいのですが、12月に入ってから冷え込むことが多くなってきました。
 自宅のリビングはエアコンのおかげで快適ですが、入浴時や明け方しか使わない脱衣所・洗面所の寒さは長年の課題でした。短時間しか使わないのに…という抵抗感もあってずっと我慢していたのですが、ついに、新聞のチラシで見つけた遠赤グラファイトヒーターをスポット暖房用に購入しました。

アラジン遠赤グラファイトヒーター

 今回購入したのは、アラジンブランド遠赤グラファイトヒーター(2灯管)です。レトロな外観ながら、衣服が触れると自動で電源OFFする装置も付いています。さっそく使ってみると電源を入れた瞬間、離れた場所でもすぐ暖かくなり、はだかでも大丈夫そうです。今までの極寒の地が嘘のように快適になり大満足です。
 ちなみに遠赤ヒーターが届けられた数日後、名古屋ではいきなり初雪(しかも8年ぶりの積雪10cmを記録する冷え込み)となったのですが、遠赤ヒーターのおかげで何事もなかったかのように過ごすことができました。


画像はウェザーニュースより

 現在、アラジンブランドの家電を販売しているのは株式会社千石という会社です。少し前に、特許庁の広報誌「とっきょVol.51」に記事が掲載されていたので紹介します。
 それによると、付き合いのあった大手企業から“超高性能ヒーターの特許技術を買いませんか?”と勧められたということで、その技術を買い取ったことが社業の転機になった経緯が紹介されています。
 もともとは家電OEM専業であった株式会社千石ですが、技術力を高めるうち、「社内にないリソースは外部から取り込む」との経営方針の下、事業譲渡により取得した特許技術を活用し、成長してきたとのこと。

 株式会社千石のHPには同社の特許第4739314号が紹介されています。J-PlatPatで検索すると、特許第5383741号(特許第4739314号の分割出願)という関連特許もあるようです。これらの公報を参照すると、(公報発行時点で)「特許権者 パナソニック株式会社」となっていますので、上記の「大手企業」とはパナソニック株式会社であったようです。
 現在、特許の約半数が未利用特許(PDF)であるとも云われ、いわゆる宝の持ち腐れであることが問題となっています。ある発明に特許権が与えられている以上、特許権者等以外はその発明を実施することができないため、未利用のままの特許権の存続期間中(最長で約20年)、出願公開後の先行技術文献としての資料的価値以外は発揮されないことになります。これは大きな社会的損失とも考えられます。
 その意味でも、アラジンブランドと株式会社千石の歩みは大いに参考になりそうです。(blink)

アップサイクル

  • 2022年11月16日
#商標】 【#特許

 近年、環境に対する意識が高まる中、「アップサイクル」という言葉がよく使われるようになっています。例えば特開2022-115087号公報に次のように記載されています。

 「アップサイクル」とは、リサイクルの一形態であり、捨てられるはずの廃棄物に対してデザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせることである。前述してきた実施形態は、食品廃材や期限切れ直前食品に対し、・・・食品として人が口にすることのできる醗酵組成物にアップグレードしている、と言うことができる。

 この公開公報の出願人である有限会社ソーイは、静岡県沼津市で発酵食品の開発を行っている会社です。ホームページに、アップサイクルに対する理念が掲載されています。

 https://soijp.com/product/upcycling/

 「ごみという概念をなくし、すべての資源を循環させる技術思考」を意味する商標として、「UP 0 TECH®(アップゼロテック)」(商標登録第6550670号)が、以下の指定商品や指定役務などについて登録されています。

UP 0 TECH

 (例)
 第3類(化粧品)
  アップサイクリング(廃棄物の再生)で製造した化粧品
 第30類(菓子、食品)
  アップサイクリング(廃棄物の再生)で製造したコーヒー
  アップサイクリング(廃棄物の再生)で製造したパン
 第40類(加工処理)
  アップサイクリング(廃棄物の再生)に関する情報の提供及び助言

 ホームページには、「UP 0 TECH®で産み出される技術や手法によってサーキュラーエコノミーの実現を目指していきたい」と書かれています。今後、ますますニーズが高くなる技術であると期待します。(コナン)

イータック®抗菌化スプレーα

  • 2022年10月26日
#商標】 【#特許

 先日BSのニュース番組を観ていたら、「特許成分○○配合!」「特許番号第○○号」とPRするコマーシャルを目にしました。特許事務所勤めの職業病か、気付いたらメモしていました(笑)。「イータック®抗菌化スプレーα」という商品です(エーザイ)。少し調べてみましたので紹介します。

 エーザイのCMですから、当然エーザイ株式会社の特許なのだろうと思ったのですが、「特許4830075」を特許情報プラットフォームJ-PlatPatで調べてみると、エーザイではなく、国立大学法人広島大学とマナック株式会社の共有特許であることがわかりました。

イータック
※写真は「イータック®抗菌化ウェットシート」のもの

 ちなみに登録商標「イータック」「Etak」も、権利者は株式会社CampusMedicoとなっています。同社は広島大学大学院医歯薬学総合研究科の研究成果の事業化を行う大学発ベンチャーとのこと(なお、同社HP「弊社の保有特許」には特許4830075も記載されていますが、J-PlatPatによると現在も広島大学とマナック社が特許権者のようです)。

 この辺りが少々わかりにくいところですが、マナック社のEtak特設サイトでは、「関連製品」のページにエーザイのほか、倉敷紡績株式会社(クラボウ)、ジェクス株式会社が紹介されていますので、この3社にライセンスされているようです。ライセンシー各社のHPだけ閲覧してもこの辺の事情がわかりにくいのですが、今回は特許番号とともにCMで紹介され、また各社HPにも紹介があったため、確認することができました。

 イータック®抗菌化スプレーαは「ドアノブやテーブルなど気になるところにスプレーすることで、持続型抗菌成分によりスプレーした部分のウイルスや細菌の繁殖を防ぎます」とPRされており、コロナ禍の2020年以降いかにも売れそうな商品ですが、さらに調べてみるとなんとコロナ禍前の2018年、「日経優秀製品・サービス賞」の「優秀賞 日経産業新聞賞」を受賞していたことが判明。…皆さんご存じでしたか?

関連リンク
1.イータック抗菌化スプレーαの製品情報|イータック|エーザイ株式会社
2.Etak総合サイト
3.製品情報|マナック株式会社
4.CampusMedico-会社概要(キャンパスメディコ)
5.日経優秀製品・サービス賞2018:TOP

(blink)

電子体温計

  • 2022年10月20日
#商標】 【#実用新案】 【#意匠】 【#特許

長く使用していた電子体温計が壊れてしまったので新しいものを購入しました。
感染予防対策だけではなく高齢の家族が定期的に検温する機会が増えたので内蔵電池が消耗したようです。
下調べする時間もなく近所のドラッグストアの売り場に行くと、複数の電子体温計があり、高機能なのに意外にも安価なことに驚きました。

以前は幼児のボタン電池誤飲防止のため電池交換ができないものが主流だった記憶がありますが、今は電池交換ができるものも売っていました。簡単に取り外しができない工夫がなされたのでしょう。
このご時世にニーズが多いと思われる防水タイプで丸洗いができるものや、付属ケースがアルコール等で清拭しやすい形状のものもありました。

悩んだ末、これまで使っていたテルモの製品で、検温終了音の音圧が約2倍で聞き取りやすいという体温計を購入しました。約20秒で予測検温でき、病院での検温のようにスピーディに計測できます。

テルモの電子体温計 テルモの登録商標

画像にあるテルモのロゴは当然のことながら登録商標ですが(第6191923号防護第01号)、さらにJ-PlatPatで調べてみるとテルモの電子体温計の特許・実用新案・意匠は250件を超えてヒットしました。

ところで、テルモの体温計には100年もの歴史がありました。昨年販売された100周年記念体温計とは!?気になる方は以下サイトをチェックです♪(カカオ)
テルモ100周年記念体温計サイト (terumo.co.jp)