ボールペン画

  • 2025年09月29日
#今日の発明】 【#特許

 本日(9月29日)と関連の深い発明について紹介します。
 今回紹介するのは、ボールペンです。

 9月29日は、最初の実用的なボールペン特許を取得したハンガリー生まれの発明家ビーロー・ラースロー(1899.9.29-1985.10.24)の誕生日です。

 とはいえ、ボールペンの技術とビーロー・ラースローの物語は既に広く知られたものとなっています()。そこで今回は、筆記用具というイメージとはかなり異なる、画材としてのボールペン(ボールペン画)を紹介します。

Polo_Pony,_ballpoint_biro_drawing
ジェームズ・ミルン, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

Mona_a'la_Mace_in_ballpoint_pen_by_Lennie_Mace_1993_(shown_cropped)
レニー・メイス, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 仕事でも家庭でも、私たちが日頃からお世話になっているボールペンですが、インクがダマになり、文字が汚くなってムッとしたことはありませんか?私はよくあります(笑)。そんな私には、上に紹介したような美しい絵が、あのボールペンで描けるとはとても信じられません。
 ここまでの芸術的な使い方は無理でも、スピログラフという歯車定規?を使えば、素人でも綺麗な図柄が描けそうです。

Various_Spirograph_Designs
See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

 ちなみに現在知られているスピログラフは、デニス・フィッシャーというイングランドの発明家が開発した((PDF))知育玩具で、日本でも1960年代後半(昭和40年代)にブームになったとのこと。今では、類似品がくるくる定規、デザイン定規といった名前で販売されています
(blink)

おしごと年鑑2025 ~小中学生向けお仕事紹介~

  • 2025年09月10日
#弁理士】 【#特許】 【#知的財産

 先日、朝日学生新聞社より「おしごと年鑑2025」が発行されました。
朝日学生新聞社おしごと年鑑2025

おしごと年鑑2025

 「おしごと年鑑」は、キャリア教育支援プロジェクト「おしごとはくぶつかん」の一環として2016年に創刊された、小中学生向けのキャリア教育用教材です。毎年、日本を代表する企業・団体の協力のもと、社会を支えるさまざまな仕事や人々を紹介しています。
 「お菓子のグミは何からできているの?」、「重たいロケットが宇宙まで飛べるのはなぜ?」、「地球から動物がいなくなるかもしれないって本当?」、「蛍光ペンってどういうペンなの?」といった子供たちの素朴な疑問に企業・団体が答える形式で、楽しみながら世の中の仕事を学べる構成になっています。

・弁理士の仕事も紹介されています
 「おしごと年鑑2025」では、110社を超える企業・団体の仕事とともに、弁理士の仕事についても取り上げられています。
 記事では、現在開催中のEXPO2025大阪・関西万博にちなんで、1970年の大阪万博から55年間にわたる「電話の進歩」を取り上げ、その過程で特許などの知的財産権、そして弁理士が果たしてきた役割を、見開き2ページで紹介しています。
 「復習クイズ」付きのWebページ版もあります。「黒電話からスマートフォンへ どうしてこんなに電話が進歩したの?」(日本弁理士会)

・学校に無償配布、電子ブック版も公開
 「おしごと年鑑2025」は、全国の小中学校約3万校に1冊ずつ無償で配布されるほか、市販版の購入や電子ブック版の閲覧も可能です。

 この本を読んだ子供たちが、将来の進路を考えるきっかけとして、弁理士の仕事にも興味をもってくれたら嬉しく思います。(ヒロ)

ロングライフパン

  • 2025年09月05日
#特許

 9月1日は防災の日ですね。防災備蓄用に食品をローリングストックしていますが、お店で賞味期限が1か月以上あるパンを見つけました。愛知県小牧市に本社がある株式会社コモが販売しており、パンでは珍しい自動販売機でも販売されていて、駅や空港などでも購入できるようです。デニッシュを一番多く見かけますが、クロワッサンやパイも販売されています。

コモのロングライフパン

 長期保存が可能な理由はパネトーネ種という酵母を使用し、水分量を極限まで少なくし、細菌の繁殖を抑えているからだそうです。何か添加物によって期限が長くなっているかと思っていたので、酵母の種類による違いと分かり子供にも安心して食べさせられそうです。実際に子供たちに与えてみると、味は賞味期限の短い他のパンと変わらず美味しいと、何個も食べていました。

 通常のパンでは実現できない「賞味期限が長い」という特徴の違いから、特許もあるのではと調べてみるとすでに期限は切れていますが、第1721291号や第2971634号として登録されていました。

株式会社コモはロングライフパンのパイオニア企業として業界シェアNo.1のようで、地元の企業なのでこれからも購入して応援したいです。現在開催中の大阪・関西万博でも商品が提供されているようです!(カモミール)

コモパンのひみつ[株式会社コモ]
株式会社コモ、大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」へのロングライフパンの協賛にあわせ、特設Webサイトを公開

闇バイト防止システム

  • 2025年07月16日
#特許

 昨今、闇バイトが絡む犯罪の増加が深刻な社会問題になっています。

闇バイト

 警視庁は、SNS上の闇バイトの募集投稿をAIで自動検知する方針を決めました(参考サイト)。現在は警察官がSNS上の投稿を検索し、警告対象を選定していますが、新しい仕組みでは、「短時間高収入」等の用語をAIが自動的に検知し、リスクを数段階に分類します。

闇バイト

 特開2025-52899号公報(出願人:ソフトバンクグループ株式会社)には、生成AIによる闇バイト防止システムの発明が開示されています。この発明では、データ処理システムにより、例えば以下の処理が実行されます。

ステップ1:生成系AIによる闇バイト防止システムが、バイト希望者とのチャットベースのやり取りを開始する。
ステップ2:バイト希望者とのやり取りを通じて、闇バイトの詳細情報を収集するデータ収集モジュールが作動する。
ステップ3:収集した情報は通信モジュールを介して警察の担当者に報告され、事件の防止が図られる。

 このような技術が、犯罪の無い安全、安心な社会の実現に寄与してくれることを願います。(コナン)

Nintendo Switch 2 ~知財戦略を徹底調査!~

  • 2025年07月02日
#商標】 【#意匠】 【#特許

 家電・ガジェット好きのヒロです。
 6月5日の発売前から大きな話題になっているNintendo Switch 2。公式ストアの抽選販売に軽い気持ちで応募したところ、なんと1回目の抽選で当選してしまいました。発売日に届いたのですが、中1の子供の中間テストが2週間後に控えていたり、テスト後も忙しかったりで、6月25日時点でまだ開封していません(子供はSwitch 2が家にあることをまだ知りません)。ようやく今週末には時間が取れそうなので、子供と遊んでみようと思います。

Nintendo Switch 2

 さて、任天堂が自社の知的財産の保護に力を入れていることはよく知られています。Switch 2にもたくさんの知的財産が利用されているに違いありません。現時点、分かる範囲(公開情報)で調査してみました。

 まず特許について調べてみると、Switch 2関連と思われるPCT国際出願が見つかりました。

特許1:PCT/JP2023/028162
国際出願日:2023/8/1、国際公開日:2025/2/6、発明の名称:ゲームコントローラ

Nintendo Switch 2

特許2:PCT/JP2023/028163
国際出願日:2023/8/1、国際公開日:2025/2/6、発明の名称:ゲーム機およびゲームシステム

Nintendo Switch 2

 前機種(Switch)ではコントローラをディスプレイ本体にスライドさせて着脱する方式でしたが、Switch 2では磁石により着脱する方式に変更(改良)されています(参考)。特許1、2は、この仕組みに関する特許のようです。特許1の日本への移行出願は、2025/6/2(発売日の3日前)に特許登録されています(特許第7690703号)。
 なお、特許1、2の国際公開日(2025/2/6)は、Switch 2の正式名称「Nintendo Switch 2」とともにコントローラを含む本体の予告映像が初めて公開された2025/1/16より後です。出願日(2023/8/1)から1年6月後(2025/2/1以降)には特許の内容(図面)が国際公開されるため、それよりも前に予告映像の公開日を設定したものと推測します。
 特許1、2の他にも、2023/8/1以降、Switch 2関連のPCT国際出願が25件程出願されているようです。この中には、Switch 2で新たに搭載されたコントローラのマウス機能に関するものも含まれています。
 現時点で国内移行が行われているものは少ない(特許1のみ?)ようですが、今後、各出願の移行期限までに、世界各国への移行手続が行われると考えられます。また、おそらく、既に出願されていて、まだ公開されていないSwitch 2関連の特許出願もたくさんあるはずです。

 続いて意匠について調べてみると、Switch 2のコントローラの一部(操作用スティック)と思われる意匠登録例が見つかりました。

意匠1:意匠登録1800949
出願日:2024/11/12、登録日:2025/6/5、公報発行日:2025/6/13、意匠に係る物品:操作器用スティックデバイス

Nintendo Switch 2

意匠2:意匠登録1800950
出願日:2024/11/12、登録日:2025/6/5、公報発行日:2025/6/13、意匠に係る物品:操作器用スティックデバイス

Nintendo Switch 2

 登録日は偶然にもSwitch 2の発売日と同日の2025/6/5で、公報発行日は2025/6/13です。もし、公報発行日が発売日よりも前だったら、コントローラを分解しないと分からない操作用スティックの裏側の形状等が発売前に公開されてしまうことになるため、絶妙な登録日・公報発行日だったと思います。ちなみに、登録査定時にまだ公開したくない場合は、秘密意匠制度を利用することにより公報による公開日を遅らせることができます。
 部品としての操作用スティックを意匠登録することで、他社による修理用部品としての操作用スティックの模倣品(粗悪品)が出回るのを防ぐ効果があると思います。
 現時点、Switch 2関連の意匠登録例は上の2つのみのようですが、まだまだこれから、たくさんの登録例が公開されると思います。

 さらに商標について調べてみると、Switch 2のロゴマークの商標登録例が見つかりました。

商標1:登録6917075
出願日:2025/1/16、公開日:2025/1/24、登録日:2025/4/9

Nintendo Switch 2

商標2:登録6917076
出願日:2025/1/16、公開日:2025/1/24、登録日:2025/4/9

Nintendo Switch 2

 上記商標は、「Nintendo Switch 2」の予告映像(Switch 2のロゴマーク含む)が初めて公開された2025/1/16と同日に出願されています。これにより、Switch 2の公開前にロゴマークが一般に知られるのを防ぐことができるとともに、他人による先取り出願を防ぐことができます。
 また、Global Brand Databaseで調べたところ、上の2つの商標と同様の商標が世界各国で出願されていることがわかりました。

 任天堂は、1つの製品(Switch 2)について、多数の知的財産権(特許権、意匠権、商標権)を取得することで、多面的な保護を図っています。
 また、特許の場合、出願から1年6月後に出願公開され、意匠の場合、審査を経て登録後に公開され、商標の場合、出願後1週間程度で出願公開されるところ、任天堂は、これらの公開時期を十分に考慮しながら、新製品(Switch 2)の発表時期、発売日等を決定したと考えられます。

 新製品を開発されている企業にとって、知的財産の戦略は極めて重要です。特許・意匠・商標をどう組み合わせて保護すべきか、公開・発表や発売のタイミングをどう計るか。実例を参考にしながら、最適な戦略をご提案できますので、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。

『博物マニア』に行ってきました

  • 2025年06月23日
#特許

スイマーです。
愛知県名古屋市吹上ホールで開催された『博物マニア』に行ってきました。テレビ愛知が主催する自然科学がテーマのイベントで、ホールではステージでの楽しい講演や100ほどのブースが机を並べる展示や販売を行っていました。

会場を歩いていると、化石や鉱物、生物のあれこれと、主にハンドメイドの物が並ぶ中に特許番号が掲げられているブースを見つけました。そこには特許を取得した3Dプリンター出力方法で作成したいろいろな動物たちが並んでおり、とても不思議で興味を惹かれるお店でした。
うっかりブログ掲載の許可を得るのを忘れてしまいましたので、特許公報の情報を載せておきます。

立体模型用3次元形状データ作成方法、立体模型の製造方法及び立体模型
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7580688/15/ja

家に帰って早速特許情報を調べるのは職業柄でしようね。

博物マニアHP
地球のお宝大集合!博物マニア| テレビ愛知
【公式】博物マニアSNS
@hakubutsumania

BRULEE

  • 2025年05月28日
#特許

 クレームブリュレとは、フランス語で「焦がしたクリーム」という意味で、プリンと似たデザートです。一般的なプリンとの違いは、表面に焦がした硬いカラメルが乗っている点です。

オハヨー乳業BRULEE

 オハヨー乳業の「BRULEE」は、本物のクレームブリュレのように表面にパリパリのカラメル層があるアイスクリームです。

オハヨー乳業BRULEE

 特許番号(特許第6732945号)が載っていたので調べてみると、発明の名称は「表面焼成食品およびその製造方法」で、物の発明と方法発明で権利化されていました。概要としては、アイスクリーム(第一の食品)とカラメル層(糖の加熱生成物の層)との間に、チョコレートなどの油脂を含む層(第二の食品)があることで、カラメル層のパリパリ感が維持されるようです。原材料表示を見ると、「チョコレートコーチング」が入っていましたので、これが特許請求の範囲にある「第二の食品」に相当すると考えられます。チョコレートが入っていてもチョコレート味にはならず、あくまでも「ブリュレ」であって、味を邪魔していないところに食品加工の技術力を感じながら、パリパリほろ苦のカラメルを噛みしめました。

 お値段はちょっとお高め(セブンイレブンで400円程度)ですが、これから暑くなる季節、頑張ったときのご褒美デザートに、また食べたいと思います。(マロン)

「マイナ免許証」とモバイル運転免許証

  • 2025年05月19日
#特許

 2025年3月24日からマイナンバーカードと運転免許証とが一体化された「マイナ免許証」の運用が開始されました。ちょうど免許証更新の時期であったため、私は、通常の免許証とマイナ免許証との両方を申請しました。運転免許試験場では、更新手続、視力検査、写真撮影、更新時講習を済ませると、通常の新免許証が交付されます。その後、マイナ免許証を希望する人は別の部屋へ行き、マイナンバーカードに免許証の電子情報を書き込んでもらいます。さらに当日の夜以降にマイナポータルにアクセスして連携を完了させることが必要です。

愛知県警察運転免許試験場

 ところで、通常の免許証にしてもマイナ免許証にしても、運転者の情報が書き込まれたICカードが発行されるという点では同じです。それに対し世界的には、スマートフォンに情報を書き込んでモバイル運転免許証として運用することが検討されているようです。特許第7003740号「モバイル運転免許証及び携帯端末装置」(特許権者:凸版印刷株式会社)の発明では、端末機認証サーバから携帯端末装置に、公開鍵と免許証情報とを結び付けて作成された公開鍵証明署名が与えられ、携帯端末装置がモバイル運転免許証となります。
 将来、自動車の完全自動運転が実現すれば運転免許証が無くなる時代が来るのかもしれませんが、それまで当分の間は運転免許証に関する技術開発が続くことでしょう。(コナン)

(参考サイト)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/individual_number.html

家計簿アプリ

  • 2025年04月15日
#意匠】 【#特許

 家計簿アプリをご存じですか?昔は家計簿というと専用ノートに支出項目ごと細かく書いて、時間と手間がかかりました。しかし今ではキャッシュレス決済連動の家計簿アプリが複数あります。その中でも私は数年前からマネーフォワードMEという家計簿アプリを使っています。

マネーフォワードME

 このアプリはクレジットカード等の各種電子決済サービスと連動させることができるため、記入する時間や手間がかかりません。現金を使った場合は、手入力でも記入できます。普段、現金しか使えないお店を除き、ほぼキャッシュレス決済としているので、使った分が自動的に家計簿アプリに登録され、毎月何にどれくらい使っているかを簡単に把握することができて便利です。

 こういったアプリには実は多くの特許や画面デザインの意匠が関係していて、マネーフォワードの家計簿アプリも特許第6534085号などの複数の特許で守られており、他社の模倣を防いでいるようです。

 最近はポイ活と呼ばれるポイントをためたり、ためたポイントを活用したりする人が増えていて、ますますキャッシュレス決済が進む世の中になっているので、ポイントや収支管理のアプリは今後も増えそうですね。(カモミール)

マネーフォワード ME|利用率No.1の家計簿アプリ

先行技術調査・侵害予防調査は『悪魔の証明』

  • 2025年02月26日
#特許

 新しい発明をして特許出願しようと思ったとき、審査で新規性・進歩性の拒絶理由が通知されるリスクを減らすため、過去に似た発明が公開されていないか、出願前に調査することが推奨されます。しかし、特殊な技術分野を除けば、日本国内だけに限っても、過去に公開された文献は膨大にあります。その中から、拒絶理由の引例となり得る先行技術文献が「ない」ことを探すことは大変困難です。似た文献が「ある」ことを探す場合は一つ見つければよいのですが、「ない」ことを探すのには終わりがありません。いわゆる「悪魔の証明」です。

悪魔

 先行技術調査を100%漏れなく行い、特許取得が100%可能であるとの確証を得ることは不可能です。しかし、特許出願を審査する審査官にとっても「悪魔の証明」であることは同じです。したがって、まず審査官が見つけそうな範囲を調査することが基本と考えられます。J-Platpatを検索して拒絶理由の引例となり得る先行技術文献がすぐに見つかれば、出願方針を変更した方がよいでしょう。ある検索条件の範囲で調査しても先行技術文献が見つからなければ、出願して特許取得にチャレンジしてみるのもよいと思います。

パソコンを見てがっかり

 自社が製造販売を予定している製品等が他社の特許権等を侵害するおそれがないか判断する侵害予防調査も「悪魔の証明」です。製造販売する国が日本のみの場合、侵害予防調査の対象範囲は、現存する有効な特許公報、及び、現在審査中で将来特許になる可能性のある特許公開公報に絞られます。ただし、実施予定製品の一部の特徴が技術的範囲に含まれる文献も見落とさないように注意する必要があります。
 特許調査のご要望がありましたら弊所にお問い合わせください。(コナン)