特許権の収益化(第2回)

  • 2024年09月12日
#特許】 【#知的財産

 前回の続きです。特許権をマネタイズする代表的な方法の続きです。

5、訴訟および特許侵害の警告

 他社が特許権を侵害している場合、他社に対して警告を行い、他社とライセンス契約を結ぶか、他社に対して訴訟を起こすことで損害賠償を請求することができます。ただし、訴訟は時間と費用がかかるため、戦略的に行う必要があります。

6、特許ポートフォリオの構築と管理

 複数の特許権(意匠権、商標権等を含められる)を組み合わせたポートフォリオを構築し、それを基にライセンス契約を進めることで、収益を最大化できます。また、ポートフォリオ全体を特定の企業に売却することも考えられます。

7、特許プールやコンソーシアムへの参加

 特許プールやコンソーシアムに参加し、他の特許保有者と協力して市場への技術供与を行うことで、ライセンス料を得る方法です。これは特に標準技術に関連する特許権で有効です。

8、投資家やベンチャーキャピタルとの提携

 特許技術を活用したスタートアップを立ち上げ、提携する投資家やベンチャーキャピタルからの資金を得ることで、特許権をマネタイズする方法です。成功すれば特許技術を基にしたビジネスで大きな収益を得る可能性があります。

9、税務戦略の活用

 特許権を活用して、税務上の優遇措置を受けることができる場合があります。たとえば、特許ボックス制度(日本では現時点で未設定)を利用することで、特許権に関連する収益に対して低い税率を適用することができます。

 以上2回に分けて説明しましたが、特許権をマネタイズする方法は、特許権の内容、市場状況、企業の戦略によって異なりますし、また、特許権を取得した国や地域によっても異なります。上記の方法を組み合わせることで、各国で取得した特許権(いわゆる知的財産権)の価値を最大限に引き出すことができます。

 ご質問、ご相談などございましたら、弊所までお尋ねください。
(マルハチ)

特許権の収益化(第1回)

  • 2024年09月10日
#特許】 【#知的財産

 特許権をマネタイズ(収益化)するためには、事業者にとっていくつかの戦略が考えられます。以下に代表的な方法を挙げます。

1、ライセンス供与

 独占ライセンス: 特許権を特定の企業に独占的に供与し、ライセンス料を得る方法です。これにより、企業は他の競合からの優位性を得ることができます。
 非独占ライセンス: 複数の企業に同時にライセンスを供与することで、ライセンス料を広く得る方法です。独占ライセンスに比べてライセンス料は低くなる傾向がありますが、収益の多様化が図れます。

2、クロスライセンス

 他社と特許権を交換することで、双方が持つ技術を相互に利用可能にする戦略です。これにより、ライセンス料の支払いや特許侵害のリスクを軽減し、新たな技術開発を促進することができます。

3、製品化

 特許技術を自社で製品化し、商品やサービスとして市場に提供することで、直接的な収益を得る方法です。これには、製造、販売、マーケティングの能力が必要となります。
 特許権のカバーする製品、サービス、ビジネスモデルなどを自社で市場に提供すること(自社で製品実施、自社による方法使用等)は、特許発明を実施する本来的基本的中核的な方法(特許制度の伝統的な活用方法)です。
 製品化は特許の価値を最大化する可能性があります。

4、特許権の売却

 特許権を一括して売却することで、即座に資金を得る方法です。特許権の将来価値を見積もり、適切な価格で売却することが重要です。売却先は、同業他社、特許ブローカー、または投資家などが考えられます。

 以上、特許権の収益化(活用方法)について、いくつか挙げましたが、この続きは次回に述べたいと思います。
(マルハチ)

爪切りの話

  • 2024年09月06日
#意匠】 【#特許】 【#知的財産

スイマーです。
先日、テレビの新製品開発失敗番組を見ていたら「特許権」「権利侵害」「意匠権」等など知財関係の言葉がたくさん出てきました。そういえば特許は普段から耳にする事はあるけど、それに比べて意匠はあまり聞かないような……と思いました。

他社の知的財産権をどうかわすか、新製品販売の苦労話、紆余曲折の末の自社知財の強化……とても興味深く視聴しました。こういったバラエティ調の番組でも知的財産用語に触れる機会が増えてきたなと感じました。

爪切り

画像は我が家で40年以上活躍する、番組で取り上げられていた会社の製品です。今でもとてもよく切れます。

黄色と白の紙

  • 2024年08月21日
#商標】 【#意匠】 【#特許】 【#知的財産

私は家族と近所にある「くら寿司」によく行きます。
しかし、いつも混んでおり、予約をしていても待つことが多いです。
とある日、いつものように順番を呼ばれるのを店内で待っていた時、たまたま座った待合席の後ろに見覚えのある紙が額縁に入って飾られていました。

特許証と登録証

なんと・・・特許証と登録証がΣ(・ω・ノ)ノ!
つい家族に「見て!特許証と登録証があるよ!」と勢いで言ってしまいました(笑)
何度も通っているくら寿司で初めて気がつき、これほど身近な場所で出会えて少し嬉しかったです。

くら寿司株式会社は特許35件、意匠15件、商標531件あり、知的財産に力を入れているのがわかります。(うさぎ)

開放特許の活用~知財ビジネスマッチング~

  • 2024年03月06日
#知的財産

 「知財ビジネスマッチング」という言葉を聞かれたことはありますか。
 自社の知的財産権は、必ずしも自社がオリジナルで作り出すとは限りません。他社の開放特許を利用して新たな商品を開発するという可能性もあります。使われていない休眠特許を保有している企業のシーズと、自社の商品開発に利用できる特許技術を求めている企業のニーズとを引き合わせて新たな知財ビジネスを創出することが知財ビジネスマッチングです。

ビジネスマッチング

 例えば中部経済産業局のホームページに、知財ビジネスマッチングのガイドブックが掲載されています。

https://www.chubu.meti.go.jp/b36tokkyo/sesaku/chizai_businessmatching/matching_toppage.html

 以前、CBCテレビ(中部地方の放送局)の番組「ゴゴスマッチングTV」でも、知財ビジネスマッチングの事例が紹介されました。

https://hicbc.com/tv/gogosumatchingtv/

ビジネスマッチング

 使われる企業によって、同じ開放特許の基礎技術が全く別の商品に利用される可能性があります。基礎技術と別の技術とを組み合わせて新たな発明が生まれることもあるようです。最近、知財ビジネスマッチングは、知財戦略の一つの形として注目されています。
 ご検討の際には弊所にご相談ください。(コナン)

みんなの森 ぎふメディアコスモス

  • 2024年02月07日
#商標】 【#知的財産

 こんにちは、ヒロです。
 子供の通う小学校・園から岐阜市展の案内があったため、家族で観覧してきました。会場は「みんなの森 ぎふメディアコスモス」です。「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、岐阜市立図書館を中心とする複合文化施設で、2015年に完成しました。

みんなの森 ぎふメディアコスモス みんなの森 ぎふメディアコスモス

 岐阜市展は、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」1階の展示スペースで開催されていました。絵画、版画、毛筆など、岐阜市内の保育所・園、幼稚園、小・中学校、特別支援学校に通う子供たちの作品が多数展示されていました。残念ながらうちの子の作品の展示はありませんでしたが、達筆な毛筆作品、子供らしいタッチの絵や緻密な絵をたくさん見ることができて良かったです。

 さて、岐阜市展を観覧した後、2階にある図書館に行ってみました。木製格子状の天井やそこからぶら下がるいくつものかさ(グローブ)が美しく、とても快適で居心地の良い空間です。

みんなの森 ぎふメディアコスモス みんなの森 ぎふメディアコスモス

 この図書館には数年前に一度訪れたことがあるものの、そのときは利用しなかったので、今回、新規で利用カードを作り、本を借りてみました。知財実務系の本を6冊と、小・中学生向けの知財の本「学校で知っておきたい知的財産権①~③」を借りました。

みんなの森 ぎふメディアコスモス

 「学校で知っておきたい知的財産権①~③」は、2009~2011年まで特許庁長官を務めた細野哲弘氏(岐阜県生まれ)が監修しています。マンガや図、写真が多用されており、小学生や中学生でも理解しやすい内容になっています。知的財産権について学ぶことのできる本として、子供だけでなく大人の方にもおすすめです。

 「みんなの森」と「ぎふメデイアコスモス」は、41類「図書の貸与、美術品の展示…」、43類「展示施設の貸与…」を指定役務として商標登録されています(登録5522323号登録5522324号)。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」

宇宙教育のすすめ

  • 2024年01月31日
#知的財産】 【#著作権

JAXAの打ち上げた小型月着陸実証機(SLIM)が世界で5カ国目に月面着陸に成功しましたね。残念ながら着陸姿勢に問題があり予定していた月探査は難しいようですが、この先この計画がどうなっていくのか目が離せません。
ところでJAXAのサイトでは教育に使える様々な教材が無料で公開されています。使用には著作権、知的財産権における利用条件がありますので、よくお読みになりご家庭で挑んでみて下さい。
https://edu.jaxa.jp/materialDB/

画像は数年前にスマホで撮った月の写真です。何かが映り込んでますね。
(スイマー)

月

ハート形のぶどう

  • 2023年09月22日
#知的財産

ご近所の方から、ぶどうをいただきました。

マイハート

このところ毎年いただくぶどうで、岡崎市の駒立で購入されるそうです。
「マイハート」という粒がハート形をした珍しい品種で、種なしで皮ごと食べることができます。甘くて美味しく、綺麗なハート形を見つけるととても幸せな気分になります。毎年この時期のお楽しみとなっています。

マイハート

調べてみたところ、「マイハート」は志村葡萄研究所で開発された品種で、「シャインマスカット」と「ウインク」を交配させたぶどうでした。
私たちが交配した品種 – 志村葡萄研究所〜Shimura Grape Research Institute〜

優良品種は「品種登録制度(種苗法)」により保護することも可能です。
農林水産省の品種登録データ検索ページで調べてみると、「マイハート」の登録はありませんが、「シャインマスカット」と「ウインク」の登録がありました。

農林水産分野でも知的財産は重要です。
日本弁理士会のホームページでは知的財産を活用したアグリビジネスなど農水知財の概要を紹介しています。
知財を活用!農林水産ビジネス | 日本弁理士会

農水分野の知財についても弊所にお任せください。お問い合わせお待ちしております。

さて、岡崎市のぶどうといえば駒立が有名です。
ぶどう狩りは10月10日頃まで営業しているようなので岡崎方面でのレジャーを検討中の方、オススメですよ♪(カカオ)
岡崎駒立ぶどう狩り組合│岡崎市 駒立 ぶどう狩り

とよたエコフルタウン

  • 2023年09月08日
#知的財産

 先日、豊田市にある「とよたエコフルタウン」へ行ってきました。
豊田市は、SDGs達成のための活動をリードしていく「SDGs未来都市」に政府から選ばれています。
「エネルギー」「モビリティ」「ウエルネス」を重点に、SDGs達成に向けた取り組みを広げています。とよたエコフルタウンは、豊かな暮らしを目指す拠点であり、10年先、50年先を見据えた新たな取り組みの事例を体感できる施設です。

とよたエコフルタウン

 とよたエコフルタウンには、小型モビリティや、世界規模の課題問題、ドローン、豊田市の歴史、SDGsなどに関する展示があり、水素ステーション、植物栽培ユニット、オフグリッドトレーラーハウスなどの施設がありました。
また、空気中の水分を飲料水に変換し、1日4ℓ生成可能な装置も見ることができました。災害時の断水や清潔な水が飲めない新興国の水不足に期待できます。

 ものづくりのまちから、モノ、コト、ヒトがつくるまちへ、というビジョンと社会の方向性を知ることができ、さらに、50年後の豊田市という映像があり、50年後の社会を見るのはとても印象的でした。
内容が気になる方は、ぜひ、とよたエコフルタウンへお出かけください。(ラズベリー)

とよたエコフルタウン https://toyota-ecofultown.com/

INTA2023 in Singapore

  • 2023年06月21日
#商標】 【#知的財産】 【#知財イベント

 5月16日~20日にシンガポールで開催されたINTA2023に参加してきました。INTA2023は、INTA(International Trademark Association:国際商標協会)の年次総会で、世界各国から商標弁理士や特許弁理士などの知財関係者が多数集まるイベントです。今年は3,700以上の企業・組織から8,000人以上の参加登録があったそうです。

シンガポール INTA2023

 会場はサンズエキスポ&コンベンションセンター。屋上に巨大な展望プールのあるホテルとして有名なマリーナベイ・サンズの足元に隣接する国際展示場です。1階の展示ホールはとても広く、各国の知財関連ツールを提供する企業や知財事務所など、多くの企業・組織がブースを出展していました。会期中、私は、日頃お付き合いのある各国現地代理人とのミーティング、会場内外で出会った各国知財関係者との交流などでした。休憩中に声を掛けられたり、こちらから声を掛けたりして知り合った知財関係者との交流は、リアルで参加したからこそできた経験でした。

INTA2023 INTA2023

 シンガポールといえばマーライオン!ということで、ミーティングの後、マーライオン公園に立ち寄りました。実物のマーライオンは、大き過ぎず小さ過ぎず、色も形もイメージ通りでした。マーライオンの後ろにミニマーライオンが居たのは新しい発見でした。

マーライオン ミニマーライオン

 今回の出張中、空港や街中で見かけた人、会場内外で交流した人のほとんどがマスクを着けておらず、出発前の日本での状況との違いに正直戸惑いました。しかし同時に、コロナ禍前には普通で当たり前だった状況を思い出しました。今後は日本でもリアルでの交流が増え、様々な業界での経済活動も活発化してくると思います。弁理士の1人として、知財業界・産業界の盛り上がりに繋がるような活動をしていきます。(ヒロ)。