コロナ時代と大学入学共通テスト

  • 2023年05月01日

#知的財産

 2020年1月後半にコロナ禍と呼ばれる時代が始まってから3年余り過ぎました。2020年1月は最後の大学入試センター試験が行われた時でもありました。翌2021年からはセンター試験に代わって大学入学共通テストが始まり、今年1月には3回目のテストが実施されました。まさにコロナ時代と歩調を合わせたかのように大学入学共通テストは年を重ねています。

 今年の現代社会の第1問の問7に、先進国で開発された「ある難病」の治療薬に係る特許権と開発途上国での治療薬の使用との関係について、適切な政策を問う問題が出題されました。

問題文抜粋

 先進国ではある難病の治療薬が開発され、死亡者数が著しく減ったのに対し、開発途上国は高価な治療薬を購入できず、また、特許料も高額であるため、それを支払って自国で製造することもできない。(中略)
 特許権保護は、治療薬の開発者が新薬開発に投資した莫大な資金を回収し、新しい研究開発を行う上で重要である。(中略)特許権者の利益を害することなく開発途上国の人々が治療薬を今すぐ使えるようにするためには、[  ]という政策が適切である。

 [  ]の中に入る正しい選択肢は以下のとおりです。

 世界保健機関などの国際機関が、先進国や慈善活動団体などから拠出された資金を用いて治療薬を購入し、開発途上国に供給する

 「ある難病」とぼかして書かれていますが、出題者が新型コロナウィルスを想定していることは間違いないでしょう。この問題は、2020年5月に当時の安倍首相が提唱しG7が検討に入ったと報じられた「ユニットエイド」の考え方に基づいて作られたものと推測されます。

 読売新聞オンライン – コロナ治療薬の「特許権プール」、国際機関仲介で大量生産…首相がG7で提案意向
 産経ニュース – コロナ薬普及へ特許共有を G7援助案も…実現には壁

 実社会での出来事から2年半が経過し、選択肢に対する評価が社会的に定着したタイミングで出題されたのではないでしょうか。知的財産に関わる者としては、このような試験問題を通じて受験生が特許制度に関心を持ってもらえれば嬉しく思います。(コナン)

 (注)イラストはイメージであり、大学入学共通テストの問題とは関係ありません。

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